知財高裁 知財訴訟 任天堂 v. MARIモビリティ開発

任天堂(原告)がMARIモビリティ開発(被告)による原告のキャラクターの使用が不正行為に該当するとした知財訴訟において、知財高裁は、不正競争防止法に基づき、被告へ損害賠償金の支払いおよび不正競争行為の差止等を命じる判決を下しました。2019年5月30日の知財高裁の中間判決で、被告による「マリカー」、「maricar」等の表示の営業上の使用行為及び「マリオ」等のキャラクターのコスチュームを貸与する行為等が不正競争行為に該当することが認められていました。以下は、本判決の抜粋です。

不競法5条3項に基づく損害の算定に当たっては,必ずしも当該商品等表示についての許諾契約における料率に基づかなければならない必然性はない。不正競争行為をした者に対して事後的に定められるべき,実施に対し受けるべき料率は,むしろ,通常の料率に比べて自ずと高額になるというべきである。不競法5条3項に基づく損害の算定に用いる,実施に対し受けるべき料率は,①当該商品等表示の実際の許諾契約における料率や,それが明らかでない場合には業界における料率の相場等も考慮に入れつつ,②当該商品等表示の持つ顧客吸引力の高さ,③不正競争行為の態様並びに当該商品等表示又はそれに類似する表示の不正競争行為を行った者の売上げ及び利益への貢献の度合い,④当該商品等表示の主体と不正競争行為を行った者との関係など訴訟に現れた諸事情を総合考慮して,合理的な料率を定めるべきである。

これを本件についてみるに,①一審原告が,一審原告の著作物や商標等に関してこれまで締結したライセンス契約における料率(甲128の1・2),②原告商品等表示は,著名なもので(中間判決書の「第3 当裁判所の判断」4(2)及び6(1)),高い顧客吸引力を有していると認められること,③一審被告会社の不正競争行為の態様は,本判決の「第2 事案の概要」の2(4)~(6)並びに中間判決書の「第3 当裁判所の判断」1~7で判示したとおりであって,一審被告会社は,原告商品等表示の持つ高い顧客吸引力を不当に利用しようとする意図をもって不正競争行為を行ってきたのであり,原告商品等表示と類似する被告標章第1及び被告標章第2並びに本件各ドメイン名が一審被告会社の売上げに貢献した度合いは相当に大きいと認められることといった事情からすると,本件各ドメイン名を使用しているMariCAR店舗及び富士河口湖店の売上げに係る料率は15%とし,本件各ドメイン名を使用していないその他の店舗の売上げに係る料率は12%とするのが相当である。したがって,本件における使用許諾料相当損害額は,別表3「売上高・料率・損害額」の「合計損害額」の欄に記載のとおり,9239万9253円となる。